Report イベント報告

前島アートセンター10年の活動

2014.12.14

日時2014年12月14日(日)18:00〜20:00(17:00開場)
収録場所那覇市若狭公民館 第1研修室
ゲスト宮城潤(元NPO法人前島アートセンター理事長)、手塚太加丸(BARRACK主宰)

沖縄県内における民間主導の新しい芸術・文化活動の拠点となり、その活動を通じて地域活性化を試みたNPO法人「前島アートセンター」。その元理事長である宮城潤氏に活動の10年間を振り返ってお話いただいた。また、後半は現在オルタナティブスペース「BARRACK」を主催している手塚太加丸氏に現在の活動についてお話頂き、宮城氏とのトークセッションを行う。

 

宮城潤氏

宮城潤氏

NPO法人前島アートセンターは、2001年4月から活動を開始し2011年11月に終了する。(初めは那覇市前島にて活動、後に栄町へ場所を移す。)活動を始める契機となったのは2000年の秋に前島三丁目ストリートミュージアムというアートイベントを行ったことである。
元々、前島は港町の歓楽街として賑やかな場所だったが、1990年におこった暴力団抗争に巻き込まれて高校生が犠牲になる事件があってから、客足が遠退くこととなる。前島を再び活性化したいというビルオーナーの協力のもと、準備室の学芸員たちとともになにか面白いことをやろうという動きのもとではじまった。当時まだ県立現代美術館という構想がありながら美術館建設が見送られている状況の中でもあった。

 

 

おもな活動としては、アートイベント、展覧会やワークショップ、レクチャーなど。なかでも「wanakio」というイベントは、前島だけでなく那覇市の農連市場・小学校などの場所を借りて、地域とつながるアートイベントを行っていた。また、沖縄県内外ほか、海外からも多くのアーティストを招聘し活動を行っていた。

しかし、活動していたビルが解体するのを機に、2007年に栄町市場へと活動の場を移す。同じくその年には美術館も開館し、県内各地でアーティストたちがそれぞれスペースを開き活動するようになった。以降、県内のアートシーンが前島アートセンターを設立した当時とは変わっていき、関わっていたメンバーの問題意識も変容することとなり、2011年解散に至る。

 

手塚太加丸氏

手塚太加丸氏

手塚氏の主催するBARRACKは、前島アートセンターを知らない世代が多く関わっている。BARRACKとは、沖縄県立芸術大学(手塚氏の出身大学)の学生たちと一緒に作り上げた空間であり、人が集える場所を作りたいというのが目的であった。後にメンバーの要望から展示会を行ったり、トークイベントを企画したりと、現在は実験的に様々なことを行っている空間である。今後の展望として、仕事をしながら資金を生み出していくこと、経済を生み出していくことと自分たちの活動をつなげていくこと、と語る。
手塚氏から宮城氏への質問には、①前島アートセンター解散時に今後の沖縄のアートシーンがどうなっていくと考えていたのか、②現在の活動とこれまでの活動とがつながっていないようにみえるがどのように繋がっていくと考えるのか、また今後の展開について、というものがあった。宮城氏からは、アートセンターを解散する頃は複数のアートセンターのような動向があり、それぞれがやれる範囲でやりたいことをやっていけるようにしようという思いがあったこと。しかし、これからのためにも前島アートセンターを検証する必要があることなど。

会場の様子

会場の様子

 

今回、様々なひとと交流できる空間の必要性についての意見も聞かれた。前島アートセンターでの活動を知ることで、今後の活動をどのようにつなげていくのか、若い世代へどのように伝えていくのか、繋がっていくのか、そして今後どのように活動していくかを検討する貴重な機会となった。

 

 

 

 

 

 

 

ゲスト略歴

宮城潤:1972年生まれ。前島アートセンター理事、アートNPOリンク理事。沖縄県立芸術大学院修了(彫刻)。2000年「前島3丁目ストリートミュージアム」に参加したことをきっかけに実行委員長として前島アートセンター(MAC)設立に関わる。現在は、那覇市若狭公民館に務めながら、アートプロジェクトなどに関わる。

 
手塚太加丸:1990年屋久島生まれ。2013年沖縄県立芸術大学デザイン専攻卒業。2012年那覇市栄町にあるシェアハウス「ナハウス」を立ち上げる。2013年屋久島にて「しらこがえり」始動。2014年那覇市大道のスペース「BARRACK」の運営を行う。